経済産業省の産業政策の有効性について

本日、2011年8月30日の読売新聞ニュースで「中小型液晶で新会社、東芝・日立・ソニーが合意」という記事がありました。すなわち、サムスン電子やLGディスプレイなどの韓国勢に対抗するため、経済産業省主導で設立された投資ファンドである「産業革新機構」が7割を出資するかたちで、エレクトロニクス業界の統合を促した、ということのようです。

東芝、日立製作所、ソニーの電機大手3社が、官民の投資ファンドである産業革新機構の出資を受け、中小型液晶事業を統合した新会社を設立することで大筋合意したことが29日、わかった。

31日にも発表する。3社の中小型液晶の2010年の世界シェア(市場占有率)は合計で21・5%で、トップのシャープ(14・8%)を抜いて最大となる。

新会社は革新機構が約7割、3社がそれぞれ1割を出資し、年内にも設立する。中小型の液晶パネルは、スマートフォン(高機能携帯電話)向けなどで需要が急増。現在は日本勢が優位に立つが、韓国、台湾勢が急追している。優位性を維持するため、日本の産業競争力の強化を目指す革新機構が再編を主導した。



しかし、この官主導の液晶パネル事業の統合については、例えば2011年6月22日の東洋経済オンラインのこの記事では、リスクを負いたくないために官製プロジェクトに合流しようとする当事者の意気込みは低いのではないかといったことが懸念されています。さらに言えば、2011年8月27日号の『週刊ダイヤモンド』の特集「「経産省」解体!」において、こうした経済産業省の特定産業振興政策そのものが、これまであまり効果がなかったと指摘されています。興味深い部分の概要を以下に示します。

今時、オールジャパンで推進するこうした保護主義的な産業政策は、時代遅れの感があるというだけでなく、日本の政官財一体化した硬直的な利益構造としての一面がうかがえるように思えます。

「半導体産業の復活」を目指して2001年にスタートした「半導体MIRAIプロジェクト」は、次世代半導体の基板技術の開発を目指した経済産業省主導のプロジェクトだが、巨額の税金を投入しながら成果もなく10年間で終了した。「経済産業省は旗を振るだけで指導力を発揮しなかったために、各社が技術流出をいやがりレベルの低い技術者を送り込んだのが失敗の原因」と関係者は語る。(50)


戦後復興機から1970年代に至まで、通産省は石炭や鉄鋼業に資金を傾斜的に集中させることで生産量を増大させ、他産業にも波及するよう誘導した「傾斜生産方式」を手始めに、特定の産業を保護して育成する政策を採った。

ターゲティングポリシーと呼ばれるこうした政策は、さまざまな分野で貿易摩擦を生み、米国などにヤリ玉に挙げられた。(中略)ところが高度成長期を経て、民間企業の独り立ちが進むと、こうしたミクロ的な政策は次第に役割を失っていく。

そこで通産省が選んだ道は、将来性があると睨んだ産業に、補助金というエサをぶら下げて国家プロジェクトに無理やり参加させるという政策だった。

顕著だったのが、エレクトロニクス業界。76年に富士通や日立、NECなどが参加した「超LSI技術研究組合」は、コンピューターのメインメモリなどに使われるDRAMを中心とした半導体デバイスで世界シェアでトップに躍り出るなど、確かに大成功を収めたケースもある。

しかし、それ以降のプロジェクトは多額の税金を投入しながら鳴かず飛ばず。なぜなら、起業自身が市場から資金を調達でき、各社の目指す道が異なる時代に、いくら補助金というニンジンをぶら下げてもライバル他社と徒党を組んで走る意義を企業側が感じなくなったからだ。(50−52)


「巨額の税金をドブに捨て続けた死屍累々の大プロジェクト政策」
<サンシャイン計画/ムーンライト計画>
第一次オイルショック後、石油に代わる革新的な新エネルギーの研究開発を進めようと1974年にスタートしたのが「サンシャイン計画」。旧工業技術院(現独立行政法人産業技術総合研究所)が中心となって進めたプロジェクトだが、太陽光発電の実験に失敗。さしたる結果は出せずに、18年間でじつに4400億円をドブに捨てた。

この対として1400億円を投じて進められたのが、省エネルギーに関する研究開発の「ムーンライト計画」。月の光も惜しんで使おうという思いから名付けられた。成果が思うように上がらず、93年からは両者を統合し、「ニューサンシャイン計画」に衣替えをしたが、これまた失敗、2000年に終了した。

(中略)

<Σプロジェクト/情報大航海プロジェクト>
コンピューター業界において、「Σ」という言葉は禁句とされるほどの失敗例とされる「Σプロジェクト」。将来、ソフトウェア技術者が不足する事態を見据え、日本語で使える業界標準のソフトウェア開発ツールを作ろうというもので、85年から5年間かけて250億円投じたが、互換性のないワークステーションと、性能の悪いツール群しか開発できず失敗した。

情報通信関連ではこのほかにも多数のプロジェクトが失敗してきたにもかかわらず、経産省は07年からGoogleに対抗する「日の丸検索エンジン」を開発しようと、@情報大航海プロジェクト」をスタートさせた。だが、Googleが世界を席巻している環境下で「同じことをやって勝てるわけがない」との批判は根強い。(54)

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