原発再稼働に関する議論に欠けているもの(1) 安全性と経済的利益をめぐる不毛な対立
関西電力大飯原発3、4号機の再稼働をめぐっては、国・地方・電力会社など、さまざまな意向や判断が絡み合い、膠着状態にあるようですが、こうした原発の再稼働をめぐる議論において、大手メディアの報道も含め、非常に問題があるように思えます。単純に電力不足や電気料金の値上げの是非といった問題で済ませてよいとは思えません。
論点はいろいろありますが、一番大きな問題は、安全性と経済的利益をめぐる不毛な対立です。
再稼働の是非を論じるにあたっては、原発の安全対策がしっかり講じられているか、これが第一に重視されるべきでしょう。ストレステストや避難計画等々いろいろあるでしょうが、要は東日本大震災と同等あるいはそれ以上の大地震が起こった場合でも、事故につながらないような安全対策・体制がとられ、万が一、過酷事故が生じた場合に、地域住民の安全確保や損害補償のための体制がきちんと整備されていることが、確認されなければならない、ということだと思います。
大手メディアの報道や再稼働を強く求める人たちの主張には、このような観点はほとんど見られません。電力が足りなくなる、火力発電によるコストが増加する、等々の理由により、再稼働を強く要請しているようですが、要するに、それは目先の損得を優先して、安全性や長期的な観点での経済合理性を軽視しているということだと思います。
もし仮に、近いうちに大飯原発周辺において大地震が発生し、同様の事故が起こった場合、その人的・経済的被害は、福島第一原発事故以上のものとなるでしょうし、なにより、私たちが福島第一原発事故から何も学ばなかったことを世界中に露呈することになります。
電力不足や燃料費のコスト増による日本経済への影響について、仕方がないというわけではもちろんありません。できるだけ、そうした経済へのダメージを少なくすることが必要です。しかし、だからと言って、安全対策もおざなりにしたままで、原発再稼働を進めることは、倫理的にはもとより、リスク管理や社会的コンセンサスの面から見ても、とうてい容認できるものではないと考えます。
現在の原発再稼働をめぐる議論における最大の問題は、安全をとるか、経済的利益をとるか、という単純な対立図式から抜け出ていないことだと思います。原発再稼働が必要であれば、政府も電力会社も、夏の電力需要が逼迫するまでに最大限の安全対策を講じるよう努め、その上で依然として残るリスクを国民に伝え、判断してもらうべきではないでしょうか。そこで、国民あるいは地域がリスクを受け止めた上で、再稼働を選ぶのであれば、それで良いと思います。
電力供給については、まだしばらくは時間の余裕があるのですから、なりふりかまわず再稼働を進める必要はまったくないはずです。リスク管理や社会的コンセンサスの観点から、再稼働するためには、どのような安全対策を講じなければならないか、ということを議論すべきだと思います。
大手メディアの報道も再稼働を求める主張も、こういう観点がまったく抜け落ちていると感じます。
「原発ゼロ」日本42年ぶり 日本経済に大ダメージ
(フジサンケイ ビジネスアイ 5月5日(土)8時15分配信)
国内で稼働する原子力発電所がついに、42年ぶりにゼロとなる。国内50基のうち唯一運転している北海道電力の泊原発3号機(北海道泊村、91万2000キロワット)が5日深夜、定期検査のため発電を停止。そのまま「原発ゼロ」が長期化すれば日本経済へのダメージは大きい。火力発電への依存度が高まり、燃料費は年間3兆円超も増加。電気料金値上げが企業活動の足を引っ張るだけでなく、国内製造業の空洞化に拍車をかけ、消費を冷え込ませる恐れもある。
稼働ゼロは、当時は2基だった原発が検査で停止した1970年4月30日〜5月4日以来。政府は関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働への同意を地元などに求めているが、見通しは立っていない。
経済産業省幹部は「原発ゼロが続けば日本は衰退の道をたどる」と懸念する。試算では1年間の原発ゼロで、石油や液化天然ガス(LNG)などの燃料費は10年度より3兆1000億円増える。日本の国内総生産(GDP)の約0.6%に当たる「国富」が海外に流出する格好だ。
燃料費増加は電気料金の値上げに直結する。東電は既に企業向けで平均17%の値上げを発表済み。家庭向けでも10%の値上げを行う方向だ。SMBC日興証券の試算によると、東電管内では企業の経常利益が約3900億円減り、家計の消費にも約3000億円のマイナスの影響がある。
東電以外の電力各社にも燃料費増は経営の重荷となる。「いずれ値上げに踏み切らざるを得なくなる」(政府関係者)とみられ、影響は全国に広がる。
原発ゼロが続けば、慢性的な電力不足は避けられない。原発の代替電源として期待される再生可能エネルギーの普及には課題が多く、火力発電の新設には10年程度かかるからだ。
企業は自家発電設備の運転や生産のシフトといった対応を迫られ、コスト増を余儀なくされる。ある大手メーカー首脳は「製造拠点の海外移転を真剣に検討せざるを得ない」と話す。海外流出は国内の雇用を減らし、国民生活も直撃する。
原発ゼロのまま今夏が猛暑になった場合、政府の需給検証委員会は日本全体で0.4%の電力不足になると試算。原発依存度が高い関電管内での不足は16.3%に達する見込みだ。
今夏は九州電力で3.7%、北海道電力でも3.1%の電力が不足する見通し。大口顧客向けの電力使用制限令や計画停電が、企業活動に犠牲を強いる事態が再び迫りつつある。










